54 大泉寺の總門
甲府市の北東若草萠ゆる夢見山の下、緑風香る麥畑の中に、武田家御三代の御位牌所がある。こゝが有名な大泉寺である。 一日この寺を尋ねる時、武田家の全盛時代の昔を追憶し、この總門を渡る松風に生者必滅會者定離の響あるを聞き、轉た感慨無量のものがある。 總門は云ふまでもなく、黄檗山型の純南支那風の建築であり、本邦まれに見る建造物として、國寳に指定されるのも近き將來であらう。正面の額には萬年山と豪書されてある。
(宮澤朝雄)